1996年3月31日発行 
A5判197頁 
頒価1,200円

 

 内容紹介

 本号の特集は、「阪神大震災研究」と題して、1995年1月17日の兵庫県南部地震以来、社会学研究室で進めてきた震災調査研究を95年末の時点で総括しています。震災当初の状況については、岩崎信彦(神戸大学)による「阪神大震災による社会解体と再生の苦悩」で詳しく論じられています。また「阪神大震災関係年表」において、震災後9ヶ月間の経緯を追うことができます。 
 震災直後から行ってきた避難所調査では、神戸市灘区内の避難所約90カ所を訪れ、避難者リーダー・施設責任者・ボランティア代表者などからの聞き取りにより、避難所運営の実態把握に努めました。この避難所調査の成果として3本の論文が掲載されていますが、それらにおいて、多数の被災者を抱え込んだ小・中学校などの<学校>型避難所と、おもに地域の役職者が運営を主導した<地域集会施設>型避難所について、内部の組織化や運営方法の特質が描かれています。また、これらの避難所相互の関係や避難所をとりまく地域との関係についても、人の移動や物資の流れ、既存の地域集団やその役職者が避難所運営にはたした役割などに注目しつつ論じられます。 
 また、震災復興まちづくりにかかわる継続的な調査報告として4本の論文が収録されています。これらの論文は、灘区のJR六甲道駅周辺の3地区と長田区の鷹取東地区で行われた「まちづくり協議会」の傍聴記録と、全世帯を対象にしたアンケート調査などにもとづきながら、震災後まもなく土地区画整理事業・市街地再開発事業の対象とされた4地区における地域住民の対応や結束の様子が鮮明に描かれています。 
 また「海外の社会学」欄では、オックスフォード大学の英国デュルケーム研究センター主催の「デュルケーム研究国際会議」(1996年7月)の概要について、大野道邦(神戸大学)がレポートしています。センターへの問い合わせ先は、次の通りです。

                   Dr W.S.F.Pickering
                   The British Centre for Durkheimian Studies  Institute of Social and Cultural Anthropology:
                   51,Banbury Road Oxford OX2 6PE
                             Phone (01865)274671
                             Fax (01865)274630

 

 

 目 次

特集 阪神大震災研究 
 阪神大震災による社会解体と再生の苦闘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・岩崎 信彦 
 阪神大震災関連年表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三浦 雅彦 
 〈学校〉型避難所における組織形成と運営形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大槻 文彦 
 〈地域集会施設〉型避難所における組織形成と運営形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・谷口 裕久 
 神戸市灘区における避難所の分布とその運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小林 和美、池田 太臣、中野 伸一 
 土地区画整理事業と住民の対抗および調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中野 伸一、大原 径子、三浦 雅彦 
 被災と復興過程にみる地域コミュニティの連続性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・首藤 明和 
 区画整理事業「第一号地区」への住民の歩み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・徳田  剛 
 市街地再開発事業と復興まちづくりの対抗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・池田 太臣、伊藤亜都子

海外の社会学 デュルケーム研究国際会議に出席して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大野 道邦

近代企業の「日本的」経営と近世商人の家業経営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多田 哲久

留学生の眼 中国残留日本人孤児の悲劇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・史  楽平 
   
長谷川善計名誉教授逝去・告別式について              
追悼 長谷川先生 
  長谷川先生を偲ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・北原  淳 
  長谷川先生を偲んで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・古川 信雄 
  「私は愛妻家なんですよ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後藤  武 
  思い出すこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・淺桐 啓祐

ソシエテ 
 宮島出張とワープロ思考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三宅 征彦 
 神戸へ、そして神戸から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・細川 裕子 
 農業と日本人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今井 俊作 
  フィクション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木 直行 
 駆け出し記者が感じたこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・片山 幸弘

社会学研究室の歴史 ―『五十年史』に向けて―(その三)

<研究室便り> 
<編集後記>