研究室便り(2020年度)

*白鳥義彦(教授):本誌37号にも記していた、本研究室出身の方々にも多くご寄稿いただいた『3 STEPシリーズ 社会学』(油井清光・白鳥義彦・梅村麦生編、昭和堂)が、2020年8月に刊行されました。編集をご担当いただいた本研究会会員でもある松井久見子さんに大変お世話になりました。大野道邦先生が立ち上げられたデュルケーム/デュルケーム学派研究会の20年間の活動の成果(2015年度から2018年度は科研費も交付)であり、大野先生のご遺稿も掲載されている『社会学の基本 デュルケームの論点』(学文社)が刊行され、私も寄稿しました。なお同書の講評が本号に掲載されています。また、『よくわかる高等教育論』(ミネルヴァ書房)にも寄稿し、『社会学史研究』第42号、『日仏教育学会年報』第27号に翻訳論文が、加えて後者には書評も掲載されました。両誌は編集も担当しています。 

2020年度後半  コロナの影響で日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員を2021年度も引き続いてつとめます。学内では、2021年度より評議員・副研究科長、EU総合学術センター副センター長を新たにつとめることとなり、「現代日本プログラム」の取りまとめ役も引き続きつとめています。採択された科研費「高等教育改革と人文学―日仏比較研究―」の研究も行っています。

 

*平井晶子(教授):2017年度から続いてきた科研「『三〇〇年から読み解く日本の家族/人口論』の構築へむけた実証研究」が最終年度となりましたので、その成果の一部を特集としてまとめました。ここしばらく長期的な時代の変化に焦点をあててきたので、新たな科研では「徳川家族人口構造の地域的多様性に関する社会学的研究」として地域性に力点を移し、引き続き伝統家族の研究を行っています。 新しい国際共同研究、Global Ports and Shipping がデンマークの科研に採択されました。2021年度から2年間、デンマークのオーフス大学とイスラエルのフイファ大学とで相互にフィールドワークを行い、港を軸に議論していく予定です。いつフィールドワークができるのか、心許ないかぎりですが、すっかりオンライン会議に慣れ、国際会議は時間もお金もかからない「新しい日常」となりました。オンラインばかりはつらいですが、移動の自由が戻ってきた暁にはオフラインと使い分け、国際共同研究がより身近な存在に変わっていくように感じています。

 

*佐々木祐(准教授):この一年はほんとうにあっという間に過ぎてしまいました。講義や実習・ゼミをどうするか、試行錯誤の毎日はまだ続いていますが、まあなんとかなっているように思います(希望的観測)。たいへんな状況のもとで作成してもらった卒論・修論の出来がよかったのがなによりの慰めです。ずっと続けているメキシコにおける中米移民調査はもちろん中断・変更を余儀なくされていますが、海外に行けない代わりに、論文2本(松田他編『集合的創造性:コンヴィヴィアルな人間学のために』および田中他編『ジェンダー暴力の文化人類学:家族・国家・ディアスポラ社会』収録)と学会発表1本(Being Migrant/ Refugee as a Process of Accumulation of "Migrant Capital": The Case of Central American Migrants in Mexico, IUAES)という形で、これまでの研究内容を公開することができました。豊岡市の外国人住民調査についても2020年後半から再開することができ、特に子育てと教育に焦点をあてた聞き取りを実施し、この3月には小林和美先生(大阪教育大学)奥井亜紗子先生(京都女子大学)などとともに報告会を行いました。とうとう観念して服薬を始めため、痛風は小康状態です。

 

*酒井朋子(准教授):オンライン授業の経験を通して、教育にたずさわる上での自分の苦手な部分が可視化されたのはよい経験でした(学生を混乱させることも少々あり、それに関しては申し訳ない限りでした)。2021度もオンライン授業は一定程度続きそうですので、2020年度の経験をいかし、学生にものごとを伝え、課題にフィードバックを返すリズムをしっかりと構築し、質のよい教育を行えればと思っています。質的社会学にたずさわる身としては、移動や渡航が大きく制限されたデメリットは大きく感じられますが、研究領域でも急速に進行したオンライン化により、国際的な発信や議論がずいぶん活性化したように思います。今年度は、2つの国際学会で発表を行いました(International Network of Museums for Peace, International Union of Anthropological and Ethnological Sciences)。そのほか、5月末の日本文化人類学会では近年英語圏の人類学で活発化している道徳/倫理研究について分科会を企画しました。この成果を現在、学術誌『文化人類学』の特集企画としてまとめる作業を進めています。