2000年3月1日刊行 
 A5判233頁 
 頒価1,200円

 

 内容紹介

 本号の特集は、「日本の世界化=世界の日本化」です。これは統合で結ばれたその前半と後半が、相互浸透し同時進行しつつあるひとつの事態であることを端的に示そうとするものです。世界中で2000年という新たな節目を迎え、各国、各地域では、一方でそのことをそれぞれユニークな形、解釈で歓迎しながら、他方で「2000年問題」という、当該国、地域に限定し得ない不安を抱えていたことが思い起こされます。このような例にもその一端が見受けられるとおり、現代社会においてますます急激に進行する社会諸関係の緊密化は、世界の一体化と各地域性の際立ちとを同時に引き起こしつつ、その相互作用からなる影響を、政治、経済領域のみならず、文化領域にまで及ぼしているのです。 
 そこで本特集では、イスラエルのE・ベン=アリ教授、アメリカのG・アムスタッツ教授、中国の周維宏教授、ポーランドのA・フリス教授といった多彩な国と地域の先生方からご寄稿いただき、当研究室の大野教授、油井教授を加えて、いわゆる「グローバリゼーション」という一連の事態の、空間軸、時間軸を駆使した立体的な把握に、果敢に取り組んでいます。 
 また海外の社会学のコーナーには、韓国の李昌基教授より同族集団に関する興味深い論文を寄せていただくことができました。 
 さらに若手院生による、震災、観光、家族企業、文化生産の場、電子メディア論、中国の労働力、組織論といった、多岐に渡るテーマの力のこもった諸論考の中には、本雑誌読者の関心にこたえるものもあるのではないかと思います。 
 最後になりましたが、伝統のソシエテコーナーには、今号も、田澤耕平、田中恵子、折井秀行の三名によって、「実社会」における生き生きとしたエッセイを寄稿してもらうことができ、本雑誌のもう一つの目的である当研究室卒業生とのリアルタイムの交流という側面も果たされています。学究的関心ともどもお楽しみいただければ幸いです。

 

 目 次

特集 日本の世界化=世界の日本化 
 特集の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・油井 清光 
 日本の社会と文化―「前近代」、「近代」、「ポスト近代」の構造的布置―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大野 道邦〔ヤギェウォ大学(ポーランド)集中講義〕 
 「グローバル・トーク」?―シンガポールにおける日本人管理者の言説と認識―・・・・・・・・・・・・・・エヤル・ベン=アリ 
 日本の「現在」として仏教的過去を再―イメージする?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゲーレン・アムスタッツ 
 中国における日本社会研究について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周  維宏 
 文明のダイナミクス ―ヨーロッパ、中国、日本―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アンヂュジェイ・フリス 
 ローカリティとしての神戸 ―社会学的理論の空間化によせて―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・油井 清光

 

海外の社会学 
 韓国同族集団の構成原理―形成要因を中心に―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・李  昌基 
  
 「復興まちづくり」の展開と「まちづくり協議会」の可能性―神戸市灘区六甲道駅周辺を事例として―・・・・・・・・伊藤亜都子 
 展示されるリアリティ―文化・メディア・ツーリズム―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今井 信雄 
 近代初期における家・同族団の再編―三井・相続講を事例にして―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多田 哲久 
 ピエール・ブルデューの「文化生産の場」―分析枠組としての可能性―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・松田いりあ 
 現代的自我におけるリアリティ感覚―電子メディアによる「仮想現実」世界の出現を踏まえて―・・・・・・・・・・池田  径 
 中国の労働力移動―浙江省嘉興市を例に― ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・郭   蓉 
 「組織とは何か」という問い―コミュニケーション比較分析の観点から―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 竹中 克久 
   
≪ソシエテ≫   
弱者の人権                     田澤 耕平(10回生) 
クラス初日                     田中 恵子(24回生) 
卒業論文再考                    折井 秀行(45回生)

〈研究室便り〉 
〈編集後記〉