1998年3月1日刊行
A5判213頁
頒価1,200円
内容紹介
15号の特集は「文化と社会」です。近年、社会学において「近代的なるもの」の相対化とその批判が、「文化」を焦点として遂行されつつあります。それは「文化」こそがこの「世紀末」社会の変動と根底的なところで連動する、もっと言うならリードするものでありえることを示唆しています。そこで本特集では、内外の状況も念頭に置きつつ、「文化と社会」についていくつかの視点から考察を試みています。大野道邦(神戸大学)は、文化をシンボルとして捉え、シンボルの三特性に対応する、表現、行為、記号としてのそれぞれの文化の今日的意義及びこれらの相互関係を議論しています。油井清光(神戸大学)は、多文化主義、共同体、国民国家、グローバリゼーション、普遍主義という、文化を語る際の枢要な用語について具体的文脈におきながら理論的吟味を行い、アメリカにおける文化的言説と社会的リアリティの微妙な関係について議論を展開しています。田中紀行(奈良女子大学)は、最近の文化社会学の動向、特にドイツのそれを取り上げ、文化社会学が文化と社会との一般的かつ基本的な関連を解明する試みであると明瞭に主張し、文化要因と社会構造を媒介する
、研究法や概念を提出しています。
また特集以外では、海外の社会学として、シーダ・スコッチプル(ハーバード大学)を筆頭に、我が研究室の若手研究者が精力的にフィールドワークを行った成果がふんだんに盛り込まれています。
最後に伝統のソシエテ欄も、黒田敬介(3回生)、田上博之(38回生)、森嶋輝也(38回生)の三名がそれぞれの立場から意義深い主張や報告を寄せています。それとともに北原淳(神戸大学)による「アジア社会科学研究協議会連盟」シンポジウムへの出席リポートも、その雰囲気や議題の焦点までを生き生きと伝えています。
目 次
特集 文化と社会
特集の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大野 道邦
文化とシンボル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大野 道邦
現代アメリカの〈文化〉―多文化主義・国民国家・グローバリゼーション―・・・・・・・・・・・・・・・・・油井 清光
現代ドイツにおける〈文化と社会構造〉研究―ライフスタイル研究を中心に―・・・・・・・・・・・・・・・・田中 紀行
グローバリゼーション、ポストモダニズム、アイデンティティの現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・松田いりあ
《エッセイ》メディア時代のアイデンティティの変容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐藤 健
海外の社会学
トクヴィル問題―アメリカ民主主義における市民参加―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シーダ・スコッチピル
フィリピンにおけるバランガイ形成―フィリピン地域社会研究の一視点―・・・・・・・・・・・・・・・・・・材木 和雄
プティン・ノミネションン・フィ―パプアニューギニア南部高地における選挙活動(素描)-・・・・・・・・・中野 伸一
日本におけるM・ウェーバー宗教社会学研究の動向について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大原 径子
複数宗族共住村落の宗族間結合―香港新界南圍宗族の事例研究―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・首藤 明和
『貨幣の哲学』におけるジンメルの分析視角・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・徳田 剛
中国の国有企業―その共同体的特徴の改革―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・楊 宇陽
近世における家族観の一試論―「宗門人別改帳」の記載分析を通じて―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平井 晶子
社会学研究室の歴史―『五十年史』にむけて―(その四)
ソシエテ
私の“社会学”を振り返って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黒田 敬介
インターネットがひらく新しいコミュニケーションの世界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田上 博之
北の大地との交流に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・森嶋 輝也
「アジア社会科学研究協議会連盟」シンポジウムに出席して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・北原 淳
<研究室便り>
<短信二題>
<編集後記>
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